粘着剤の三大要素であるタックとは?

粘着テープはチーターよりも速い?
スピード勝負のカギとなる「タック」とは

テクノロジー

粘着テープの性能を左右する三大要素のひとつである「タック」。凝集力や粘着力とは異なり、数値化の難しい要素です。その性質やテサ独自の試験方法をご紹介します。

ハチミツはタック(べたつき)が高く、指で触るとベタベタします。
ハチミツはタック(べたつき)が高く、指で触るとベタベタします。

タック(Tack)とは粘着テープに塗工されている感圧接着剤(粘着剤)にとって必要不可欠な三大要素のうちのひとつで、粘着剤の表面を指で触れた際に感じる「べたつき」を指します。粘着剤が被着面にくっついていようとする「粘着力」と粘着剤の内部で形を保とうとする「凝集力」と並び、粘着剤のべたつきを指す「タック」も粘着テープの性能に影響する重要な要素です。

タックは感圧接着剤(粘着剤)が被着体の表面に触れた瞬間に発生する力で、接着に必要となる圧力と時間を最小限に抑えることができます。タックの高い粘着剤が被着面になじむ(濡れる)スピードは、地球上の生物で最も速く走れると言われているチーターにも劣りません。

タックの高い粘着剤とは?

タックは粘着剤の「濡れやすさ」に深く関係しています(濡れと接着のメカニズムについての説明はこちら)。タック(べたつき)の高い粘着剤は被着面への食いつきがよく、肉眼では見ることのできない被着体の凹凸へ素早く濡れることができます。つまり、タックの高い粘着剤は圧力をほとんどかけなくても短時間で濡れる性質のため、貼りつけ時にかける圧力や時間を最小限に抑えても強力な接着ができるのです。

高いタックを必要とする用途は数多くあり、様々な粘着剤が開発されています。タックが高い粘着剤の代表例は、天然ゴム系粘着剤や、タッキファイヤーと呼ばれる添加物を配合したアクリル系粘着剤です。

しかしタックが高い粘着剤は柔らかく、凝集力が低くなります。重い部品などを長時間保持し続ける用途などには適さないため、注意が必要です。

感圧接着剤(粘着剤)は手指などで圧力をかけることで被着面の凹凸へ入り込むため(濡れの促進)即時に接着することができます。
感圧接着剤(粘着剤)は手指などで圧力をかけることで被着面の凹凸へ入り込むため(濡れの促進)即時に接着することができます。
タックを数値化し評価するテサ独自の試験方法です。粘着剤の上にボールを転がし、停止するまでの距離を測定します。
タックを数値化し評価するテサ独自の試験方法です。粘着剤の上にボールを転がし、停止するまでの距離を測定します。

タック(べたつき)の評価方法について

先ほど、タックは粘着剤のべたつきや食いつきだと説明しました。しかし指で触った感触では定性的で評価しづらく、被着体の物質(マテリアル)や表面の状態、室温など様々な要因によって食いつきやすさが変化します。そのため、これまではタックを定量化して評価するのは難しいとされてきました。テサでは粘着剤の研究開発を長年行ってきた経験を活かし、ボールタックテストという独自の試験方法によってタックの数値化と評価を行っています。

ボールタックテスト(Rolling Ball Test)は、決められた角度のついた傾斜から被着体となる金属の球体(ボール)を転がし、ボールが止まるまでの距離を測定する試験です。タックが高い(食いつきがよい)粘着テープほど、ボールの転がる距離が短くなります。特にタックが重要となる製紙・印刷業界向けの粘着テープを評価する際、より実際の条件に近づけるため被着体の紙を巻きつけた円柱状のものを使用し、評価を行うこともあります。

高タックが求められる用途:スプライス(つなぎ)

あまり一般には知られていませんが、製紙・印刷業界ではスプライス(原反つなぎ:Splicing)工程で粘着テープが使用されています。巨大な生産設備を紙やフィルムが高速(時速115km)で通過していくため、大きなロール(原反)を使用していても必ず継ぎ足しが必要になります。そのたびに装置を減速・停止させて新しい原反と入れ替えたり、紙やフィルムを繋いでいると生産効率が落ちてしまいます。高速で回転する原反の回転スピードを落とさず、トラブルで生産自体が止まってしまうことのないよう確実につなぐために開発されたスプライス専用の粘着テープ(テサ イージースプライス®)です。

非常にタックが高く、ほとんど圧力がかからなくても素早く濡れが進行し一瞬で強力に接着することができるため、時速115kmもの高速で走行している原反のスピードを落とすことなくつなぐ(給紙)ことができます。この速度はチーターが走るスピードよりも速いため、イージースプライスの粘着剤が濡れるスピードはチーターよりも速いと言うことができるのです。

→商業印刷向けのイージースプライス®製品はこちら
→フィルム製造・加工向けのイージースプライス®製品はこちら
→再パルプ化が可能な水溶性のイージースプライス®製品はこちら(製紙業界向け)