日常的によく見るロール状の粘着テープは、どのように製造されているかご存じですか?もし仮に1つ1つ粘着テープを芯に巻きつけて製造すると、巨額の生産コストがかかってしまいます。
実際には、巨大なシート状の粘着テープを製造し、そこから1本の長いロール状に巻き取ります。文房具などの粘着テープは、さらに小さい芯(軸)に巻きとって輪切りに加工しています。
テクノロジー
日常的によく見るロール状の粘着テープは、どのように製造されているかご存じですか?もし仮に1つ1つ粘着テープを芯に巻きつけて製造すると、巨額の生産コストがかかってしまいます。
実際には、巨大なシート状の粘着テープを製造し、そこから1本の長いロール状に巻き取ります。文房具などの粘着テープは、さらに小さい芯(軸)に巻きとって輪切りに加工しています。
はじめは粘着剤の製造です。テサでは、独自に原材料を配合した粘着剤を使用しています。アクリル系粘着剤を使った製品を製造する場合は、重合する工程からスタートします。つまり、粘着剤を構成する分子鎖(ポリマー)を化学的に組み合わせる工程です。重合してつくられた粘着剤は、次の塗工(塗る)工程の準備に入ります。塗工の手法や粘着剤の種類によっても異なります。
最も一般的な工程では、粘着剤に揮発性の有機溶剤を混ぜた溶液を基材(粘着テープの軸となる素材)に塗工します。乾燥炉に入れて溶剤を蒸発させることで、表面に薄い粘着剤の層をつくることができる仕組みです。テサでは、乾燥炉で揮発させた有機溶剤をほぼすべて回収する仕組みを採用しています。回収された溶剤は、資源の無駄遣いをへらすため次回以降の製造工程で再使用されます。
水系粘着剤の製造工程も、この工程とほとんど同じです。有機溶剤の代わりに水を溶媒として使用しています。この手法はテサでもよく使われています。
これに対し、いわゆる「ホットメルト」製法は溶媒を加えません。粘着剤を加熱してドロドロの液状にします。ミンチからソーセージをつくるときのように、原材料をすき間からグッと押し出します。均等に塗られた粘着剤が冷えたら完成です。
粘着テープの素材や用途によって、上記の他にも必要な工程が発生する場合があります。例えば、粘着剤をより強く定着させるため、基材に対して前処理を施すことがあります。基材となる適した素材が市販されていない場合は、テサが独自に開発することでお客様のご要望に合った製品をつくることもあります。非常に高い透明度が求められるディスプレイ用の製品が例として挙げられます。
エレクトロニクス業界では、タッチパネルなどディスプレイの製造に非常に高透明な粘着テープが使用されています。ここで求められる透明とは「光学的に」透明とされ、完成したディスプレイを人の目で見てもこの粘着テープを見つけることはできません。ごくわずかな不純物が混ざること、粘着剤の内部に引っ張られる応力が生じることが大きな課題になってしまうほど、完璧な透明性が求められます。微細なホコリの粒が入ってしまうだけで「光学的に透明」ではなくなってしまいます。そのため、この製品の製造工程にはクラス7のクリーンルームを使用しています。クリーンルームの中の空気は、山頂の大気と比較して1000倍きれいだと言われています。このような特殊な設備を使用することで、はじめて光学的に高透明な粘着テープがつくられます。
粘着剤の塗工が完了した状態は、まだ巨大なシート状のままです。基材として様々な素材(布、フィルム、フォーム材など)が使用されますが、原反にそのまま粘着剤を塗工するため、巨大な設備をつかって製造しています。塗工が完了した原反は必要に応じて乾燥工程へと進み、次は後加工の工程に入っていきます。いわゆる両面テープをつくる際は、基材の反対側に粘着剤を塗工する必要があるため塗工工程へと戻ります。最後に原反を巻き取るときに剥離紙(ライナーまたはセパレーター)が追加されます。塗工と巻き取り工程が完了したら、専用の切断機によってスリット加工(輪切り)され、幅の細い粘着テープが完成します。