tesa® Twinlockで廃棄物ゼロの実現へ - ORION社の軟包装印刷工程での導入事例
tesa® Twinlockは繰り返し使用可能な粘着剤をスリーブに塗工した、これまでにない新しい製品です。従来のクッションテープを貼りつけ・はがす工程が不要になり、時短と廃棄物削減に貢献します。ORION社(韓国の食品メーカー様)では、軟包装の印刷工程で実際に導入されています。
tesa® Twinlockは繰り返し使用可能な粘着剤をスリーブに塗工した、これまでにない新しい製品です。従来のクッションテープを貼りつけ・はがす工程が不要になり、時短と廃棄物削減に貢献します。ORION社(韓国の食品メーカー様)では、軟包装の印刷工程で実際に導入されています。
テクノロジー
2018年1月、中国は海外からのプラスチック廃棄物の輸入を禁止しました。当時、世界で2,000億ドルと言われていたリサイクル産業は大混乱に陥りました。これまで不燃ゴミを中国に輸出していた先進国の多くは、自国内で処理しなければならなくなってしまいました。行き場を失った大量のプラスチックごみは、各国で大きな問題になっています。
当初、アジアの隣国であるマレーシアやベトナム、タイなどが不燃ゴミの引き受けを検討しました。しかし、自国の不燃ゴミを廃棄するプロセスが整っていない中、世界中の大量のゴミを処理するのは難しいという結論に達しました。
日本のお隣にある韓国も、この問題は大きく取り上げられています。韓国はプラスチックの消費量が増加傾向にあった矢先の出来事でした。2015年の統計では、国民1人あたり133kgのプラスチックを消費している計算になります。これは、米国(1人あたり93kg)や中国(1人あたり58kg)の標準をはるかに上回っています。
中国で廃プラスチック輸入禁止が発令されて以降、韓国のみならず世界中のプラスチックごみ廃棄処理施設では処理能力を超える大量のゴミが集められ困難な状況が続いています。今日現在においても、推定120万トンの廃棄物のうち大半がプラスチックごみと言われています。これらが巨大なゴミの山となり日々拡大し続けています。
この環境問題は社会問題として大きく報道されました。韓国では約66,000名が廃棄物を分別する業務に従事していると言われていて、そのほとんどが60代かそれ以上の高齢者です。分別したゴミを廃棄物処理場へ持ち込むことで収入を得ていた高齢者が、この社会問題の一番の被害者となってしまいました。分別済みの廃棄物が海外から大量に輸入され市場に出回ったことで、新聞やプラスチック、段ボール等の廃棄物全般で引き取り価格が大幅に下落し、結果的に彼らの収入が激減してしまったのです。
この問題を重く受け止めた韓国政府は、2018年中に多くの措置を実施しました。プラスチックごみの排出量を2022年までに30%、2030年までに50%削減することを目標に設定しました。さらに、2030年までに韓国内のリサイクル率を34%から70%へ引き上げる計画も発表しました。他にも、カフェやファストフード店での使い捨てコップの使用を法律で禁止し、スーパーマーケットでは使い捨てのビニール袋を法律で禁止する措置をとっています。
しかし、一部の環境団体は「これらの措置だけでは不十分だ」と主張しています。廃棄物をめぐる攻防戦は、まだ世界的に続いています。政治と民間団体、企業が一緒になって取り組まなければ解決に向かうことはないでしょう。
韓国のスナック菓子メーカーであるORION Corporation社は、この問題が取り上げられるより前から廃棄物を減らす取り組みを実施していました。世界的にも有名なチョコパイメーカーのORION社は、グッド・パッケージング・イニシアチブ・プログラムを2014年に始動しています。現在も進行中のこのプロジェクトは、チョコパイのパッケージ簡素化と、パッケージ印刷に使用されるインキ量を減らすことの両方を目指しています。2018年の時点で、対象となる20製品で包装サイズを小さく変更し、パッケージ印刷に使用されるインキ量は88トンの削減につながったそうです(2016年との比較)。
ORION社にとって商品パッケージの改善を目指すという取り組みは、サステナブルな社会を実現するための活動の一部です。そのため、パッケージに着目した取り組み以外にも、より栄養価が高く健康的なスナック菓子の開発にも取り組んでいるそうです。サステナビリティに関する取り組みを重視しているORION社は、パッケージ印刷の手法に着目し従来のグラビア印刷からフレキソ印刷へと切り替えることを決定しました。
グラビア印刷とフレキソ印刷では、スリーブ(もしくはシリンダー)と版を使用し、長時間のロングラン印刷による大量印刷が可能な点が共通しています。日本の商業印刷で主流となっているグラビア印刷は、印刷品質の高さが特徴ですが特定の種類のインキを使用する必要があります。一方、ヨーロッパで主流のフレキソ印刷は、環境にやさしい植物由来のインキなど様々な種類のインキを使用することができます。
ORION社はフレキソ印刷への切り替えと合わせて、tesa® Twinlockテクノロジーの導入を決定しました。これまで軟包装の印刷業界になかった「繰り返し使用できる」粘着剤つきのスリーブです。従来のフレキソ印刷工程では、クッション性のある粘着テープをスリーブに貼りつけ、その上に樹脂凸版を貼りつけます。版を貼り替えるときは粘着テープをはがして廃棄するのが当たり前です。Twinlockは繰り返し使用できるため、パッケージを印刷する工程において廃棄する粘着テープを大幅に削減することができます。
tesa® Twinlockは、印刷工程のご要望に基づいてカスタマイズしていただくフルオーダーメイドの製品です。はじめに、印刷機メーカー各社様が提供している中から、スリーブを選択していただきます。このスリーブに直接ポリウレタン(PU)のフォーム材を巻きつけていきます。このとき、フォーム材の硬さについても3種類からご選択いただきます。補強フィルムをはりつけ、最表面にTwinlockテクノロジーの「貼ってはがせる」特殊なポリマーのレイヤーを塗工し、tesa® Twinlockの完成です。
Twinlockの粘着層は半永久的に粘着性をもちます。一度樹脂凸版をはがした後でも、別の樹脂凸版に貼り替えることが可能です。専用のアクティベーターを使用し、表面の洗浄作業をおこなっていただきますが、半永久的に再利用が可能で版を固定する粘着テープをはがして廃棄することがなくなります。
通常のクッションテープと同様に、フォーム材の硬さによって印刷の仕上がりを調節できます。Twinlockレイヤーの内側にあるオープンセルフォーム構造が半永久的に印刷時の衝撃(バウンス)を吸収します。ご用途に合わせて3種類の中から適切な硬さのフォーム材を選択していただけます。
実際にTwinlock製品を製造する際は、レーザー技術を駆使して精密にスリーブの寸法を測定しクッションレイヤー等の加工を実施いたします。万が一、ベースとなるスリーブや粘着層に大きな損傷が発生してしまった場合、Twinlockの粘着層を再コーティングすることになります。通常通りお使いいただければ、半永久的にスリーブをご使用いただけます。長い目でみたとき、ランニングコストの削減や投資収益率の向上、生産コストという面で有益になります。
これまで業界では当たり前だった樹脂凸版を固定するクッションテープを廃棄する文化を覆すtesa® Twinlockは、ORION社の目指す「グッド・パッケージング・イニシアチブ・プログラム」の方針に合致する新たな選択肢として受け入れていただきました。ゴミ削減という観点だけではなく、従来のプロセスよりも版の貼りこみ作業にかかる時間も大幅に節約できました。従来のスリーブ+クッションテープの場合は平均で10分かかりますが、tesa® Twinlock導入後は平均で3分と大幅に時短できたことが分かりました。ORION社は従来のクッションテープを購入する必要がなくなり、資材コストの削減にもつながったといいます。
当時を振り返ると、tesa® Twinlockへの切り替えはORION社にとっても大きな決断だったそうです。これまでの実績や稼働時間の確保、投資収益率(ROI)、技術サポート、運用実現性など様々なメリットをご考慮いただいた結果、幸いにも費用対効果が認められtesa® Twinlockの導入が実現しました。
導入をご検討いただいているとき、ORION社の代表者の方をテサグループのドイツ本社へ招待させていただきました。Twinlockの特徴をより具体的にご理解いただき、ヨーロッパの印刷企業様でTwinlockテクノロジーがどのように受け入れられているか等を実際に体験していただきました。その後、弊社のエンジニアが韓国を訪問しORION社の印刷工場をにて3日間の研修を実施させていただきました。誤った使用方法が伝わることのないよう、韓国語に翻訳した操作マニュアル等もご提供させていただきました。現在もORION社へのサポートは継続して実施させていただいています。
お客様とよりよい関係を長く続けることが非常に重要であり、今後もテサグループ全体でお客様のサポートに取り組んでまいります。
1956年創業のORION Corporationは、チョコパイをはじめキャラメルやキャンディーなどのスナック菓子メーカーです。中国やベトナム、ロシアに生産拠点をもち、輸出先はアメリカ、ヨーロッパ、東南アジア、オセアニア、中東とグローバルに活躍しています。2018年の世界的な市場規模は1,751.2百万ドルと言われています。ORION社は国際的なシェア拡大と他の食料品の事業参入を掲げています。