物理学の博士号をもつステファン・レーバー博士は、入社27年のベテランです。製品や技術の開発部門で責任者を14年間務めた経験を買われ、2021年4月1日にテサグループ初のCSO(チーフ・サステナビリティ・オフィサー)に任命されました。サステナブルな製品や環境負荷を低減できる製造技術の開発に加え、企業として掲げるサステナビリティ目標達成に関わる活動すべての舵をとる重要な職に就きます。
サステナビリティ
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サステナビリティ
物理学の博士号をもつステファン・レーバー博士は、入社27年のベテランです。製品や技術の開発部門で責任者を14年間務めた経験を買われ、2021年4月1日にテサグループ初のCSO(チーフ・サステナビリティ・オフィサー)に任命されました。サステナブルな製品や環境負荷を低減できる製造技術の開発に加え、企業として掲げるサステナビリティ目標達成に関わる活動すべての舵をとる重要な職に就きます。
テサ初のCSOに就任して1年間が経ちました。これまでの経験を踏まえ、いま最も大切だと思うことを教えてください。
専属の部署こそなかったですが、これまでもテサとしてサステナブルな未来を実現するための取り組みはありました。今回初めてサステナビリティ部門を立ち上げることになり、組織としてサステナビリティを重要なこととして扱っていることが明確になったと思います。そのおかげで、様々な課題に対して一貫して取り組むことができ、効果的に進められるようになりました。
サステナビリティに重点を置いて戦略を立てるということは、テサグループ全体に関わる重大なチャレンジでもあります。サステナビリティはすべての部門に関係することで、それぞれが直面する問題の大きさも様々です。それでもサステナビリティを推し進めていくことで、ビジネスチャンスがさらに広がると思います。
一番大切だと感じることは、お客様が期待する製品やソリューションがよりよいものになる可能性を秘めていることですね。たしかに、サステナビリティには色々な切り口があるので少し込み入った部分もあります。ただ、課題が複雑になればなるほど試行錯誤をしていくのがもっともっと面白くなると思っています。
この数か月で特に力を入れて取り組んだことを教えてください。
2021年の後半、サステナビリティ・アジェンダの見直しに心血を注ぎました。その結果、サステナビリティ目標の大幅な引き上げと、それに呼応するかたちでサステナビリティ・アジェンダも更新されました。長期的な見通しを含めた戦略を練り直し、新しく決定した目標に対して具体的にどんなアプローチをとるか、という計画も立てました。
サステナビリティへの取り組みは、テサグループ全体がとても好意的に受け止めていると思います。多くの社員がこの課題に対して真摯に取り組んでいて、自分の専門知識や業務を通じて貢献したいというモチベーションの高さを感じます。本当に素晴らしいことです。
もちろん、製品のサステナビリティ向上や製造工程のサステナブル化も重要視しています。特に重視していることは、廃棄物を減らすこと、サプライチェーンをさらにサステナブルで透明性を高めること、よりサステナブルな特徴をもった製品をたくさん開発することです。最近上梓した2つの梱包用テープが良い例ですね。1つは植物由来の原料からつくられたフィルムを使った、バイオマス由来の梱包用テープです。もう1つは、FSC®認証を受けた紙を使用した梱包用テープです。こちらは古紙のリサイクルに適していることが特徴です。
各国にある拠点の取り組みが功を奏し、排出ガスを大幅に削減できたこともこの場で紹介させてください。2021年に、中国の蘇州工場に2,000台近いソーラーパネルを設置して、大規模な太陽電池システムを稼働させました。毎年約900トンものCO₂が削減できます。他の4つの拠点では発電で生じる熱エネルギーを無駄にしないシステムが稼働していますし、世界中のすべての拠点では再生可能エネルギーで発電した電力を使っています。
就任前は製品開発や製造技術の開発がご担当でした。そのなかでサステナビリティに関連する部分もあったと思いますが、どのようにバランスをとって取り組んでいたか教えてください。
2つの分野は別々ではなく、お互いに補完し合っています。もともとテサの強みは、製品の設計と技術開発の両方で革新的(イノベーティブ)であることです。新しい製品や技術を生み出すことについて多くの経験と知識を積み上げてきていて、これからも新しいものを生み出していくことに挑戦し続けていくことは間違いありません。そしてサステナビリティを実現するためには、いまある技術をさらに発展させる必要があります。ですから、未来のためにサステナビリティを中心とした技術革新を目指すべきなんです。
これまでのノウハウに加え、500名以上の研究者やエンジニアの力があります。彼らのたゆまぬ努力によって、サステナブルな製品開発や製造工程の最大化は常に前進しています。技術革新を目指すという点において、会社としてはこれからも最重要事項として注力していきます。そのなかで継続して製品の持続可能性を高めていき、同時にイノベーションを目指していきます。
テサに所属するエキスパートたちなら、この壮大な計画も成し遂げられると思います。ここは自信とプライドをもって断言します。
サステナブルな製品開発で、最も難しいと思うことを教えてください。
サステナビリティ(持続可能性)には様々な側面があることです。だからこそ、私たちもこの課題に対し様々なアプローチで対応しています。たとえば代表となるのが、粘着剤の配合と基礎となる素材を調整することで、よりエコな製品にすることですね。
他にも、自然素材や再生材料を使ったり、製造工程で有機溶剤の使用量を減らしたり、エネルギー効率を最大化できる製造工程に変えていくこともサステナビリティにつながる取り組みです。サプライヤー企業とも協力して、ベストな解決策を模索する活動もしています。彼らにとっても、環境負荷を低減した素材の開発は重要なトピックです。私たちの製品を通してサステナビリティへ貢献することになりますからね。
もちろんそれだけではありません。私たちのお客様である企業がテサの製品を使うことで、その企業の製品をよりサステナブルなものに進化させたり、製品をつくる工程をよりサステナブルにしたり、など「よい変化」を起こすことを目指しています。製造業という大きなくくりでは様々な場面で粘着テープが使われていますから、幅広い業界でよい変化を起こしていきたいですね。
いま注目されているe-モビリティ(自動車のモーターを電動駆動にすること)の分野でも、粘着テープにできることはあります。例えば、バッテリーを取りつける従来型の部品を粘着テープに置き換えること。車体の軽量化につながったり、耐熱性をさらに高めたりできます。
実は、バッテリーの取りつけという分野は未知のものではありません。世界中で使われているスマートフォンのバッテリー固定は、テサのボンド&ディタッチという製品が広く採用されています。以前は安全にバッテリーを取り外すのが難しく、本体ごと廃棄するしかありませんでしたが、今ではボンド&ディタッチを引っぱるだけで取り外せ、バッテリー交換ができるようになりました。
これからも企業が抱える課題に真正面から向き合い、協力し合いながらベストな解決策を見つけていきたいと思います。
制限や限界を感じるところがあれば教えてください。
率直に言うと、長い道のりの挑戦になることですね。自分たちが満足できるレベルに達するまで何年もかかるでしょうし、いまお届けしている製品はこれまで研究に研究を重ねて洗練された傑作だと思っています。単純に自然材料へ置き換えができるようなものではないので、長い旅路のスタート地点に立っているように感じます。
ですが、これまでテサが事業を続けてきた125年間の歴史の中で様々なイノベーションを起こしてきたことも事実です。全員が一丸となって努力することで、また新たなイノベーションを起こすことができると確信しています。