粘着テープには感圧接着剤(粘着剤)が使われています。粘着テープに特化したテサ独自の視点と経験に基づき、感圧接着剤の豆知識をご紹介します。
感圧接着剤 (PSA) とは?
テクノロジー
感圧接着剤(PSA)とは?粘着テープがくっつく仕組みを解説します。
感圧接着剤(PSA)とは?
感圧接着剤(PSA:Pressure-Sensitive Adhesive)は接着剤の一種で、粘着テープに塗布されている「粘着剤」のことです。圧力がかかることで形状を変化させ、被着体への濡れ性が高まることでくっつきます。
感圧接着剤たらしめている特性は、大きく分類すると3つ。表面に強くつく力(粘着力)、粘着剤が固まっていようとする性質(凝集力)、べたつき(タック)です。このうち1つでも欠けてしまうと、感圧接着剤にはなりません。
接着剤がくっつくメカニズム
液体の接着剤と感圧接着剤(粘着剤)がくっつくメカニズムは似ています。
物質の表面には、肉眼では見ることのできないほど細かい凹凸が存在しています。液体接着剤や粘着剤はこの隙間に入り込み「濡れる」ことで、物質との間に生じる分子間力を高めています。分子間力は、分子と分子のあいだに生じる引力の総称です。
接着と「濡れ」
液体接着剤や感圧接着剤(粘着剤)が被着面の凹凸に入り込むことを「濡れる」と表現します。英語圏でも同様に、水や雨などで濡れている状態を表すWet(ウェット)という単語を用いて表現します。
サラサラした液体や柔らかい粘着剤など、素早く凹凸に入り込むことができる特性を濡れ性(Wetting・ウェッティング)に優れると表現します。濡れやすい素材は、接着がしやすい素材と考えられます。
液体接着剤と粘着剤の違い
一般的な液体接着剤は、被着面に濡れた状態で液体から固体へと状態(相)を変化させることで強力に接着します。固体になるまで養生する(固まって強度がでるまで動かさずにおくこと)必要があります。
これに対し、粘着剤は液体と固体の中間のような存在です。強く押しつけられて圧力がかかることで、粘着剤の形状がぐにゃっと変化します。被着面への濡れが促進されるため、貼りつけ直後でも優れた接着性能を発揮できます。また、粘着剤は圧力をかけずとも徐々に濡れが進む性質をもつため、貼りつけてから時間をおくことで徐々に粘着強さ(粘着力)が高まります。
液体接着剤 | 感圧接着剤 (粘着剤) | |
---|---|---|
物質の状態(相) | 液体 → 固体 相転移が必要 | 液体と固体の中間 |
濡れを促進させる方法 | なし (液体の粘度を下げる) | 圧力をかける (粘着テープを押しつける) |
養生する時間 | 化学変化や水分の蒸発など、液体が固体になるまで | 濡れが進んでいれば不要 |
汎用的に使うなら天然ゴム系粘着剤
粘着剤の原料としてよく使われる素材は、天然ゴムです。様々な素材と相性がよいため、被着体の素材が多岐にわたる表面保護テープや梱包用テープなどでは天然ゴムをベースとした粘着剤がよく使われます。
一方、粘着テープ自体に耐久性が求められる場合があります。紫外線への耐性(耐UV性)や耐熱性、耐冷性などです。このような場合は、アクリル系の粘着剤が好適です。合成ポリマーからなるアクリル素材は調合できるため、様々な特性をもった粘着剤を作ることができます。
天然ゴムから粘着剤をつくる
原料となる天然ゴムの粒を細かくなるまで砕き、粘着付与剤(タッキファイヤー)となる樹脂などの材料を配合して溶かします。このとき、耐UV性を高めるために添加剤を加えることもあります。
こうしてできた粘着剤をフィルムなどの基材へ塗る工程に進みますが、粘度が高いままだと粘着剤を均一に薄くできません。そのため溶媒と混ぜて塗工しやすくします。一般的には有機溶剤を用いますが、テサでは水を溶媒として使う水系粘着剤や粘着剤を温めて塗工するACX製法などを得意としています。
粘着テープの製造工程
- 下地処理:基材(フィルム)に塗布するプライマーのアンカー力(あんかーりょく)を向上させるため、下地処理またはコロナ処理を行います。テサフィルム(ドイツで販売されている、いわゆるセロハンテープ)の基材はポリプロピレン素材です。幅は1.33m、長さは5,000mのものを使います。
- プレコーティング:プライマーをフィルムに塗工し、余分なプライマーをスクレーパーで除去します。プライマーは、フィルム基材と粘着剤がよくつく効果をもちます。
- 乾燥:プライマーの水分を蒸発させます。乾燥炉(ドライヤー)の中は5つのゾーンに分かれていて、それぞれで違う温度が設定されています。この中をフィルムが通過することで、余分な水分を蒸発させます。
- ローラーステーション:フィルムのたるみを伸ばします。粘着剤を塗る前にしっかりフィルムを張ってシワのない状態にします。
- ウェブエッジの調整:ウェブ(原反)が正しい位置にくるように、精密な調整を行います。塗工工程のズレを防ぎ、まっすぐ進むように位置を合わせます。
- コーティング:パンローラーやデフレクションローラーを使って感圧接着剤(粘着剤)を塗工します。多めに粘着剤を乗せ、スクレーパーを使って余分なものを削ぎ落としていきます。
- 乾燥:塗工した粘着剤をしっかり乾燥させます。プライマーは5種類の温度ゾーンを通過させましたが、粘着剤は12種類のゾーンに分かれています。前半は少しずつ温度が高くなるように設定されていて、後半からは段階的に温度が下がるように設定されています。
- ローリング:巨大なロール(ジャンボロール)に巻き取ります。扱いやすい小さいサイズに巻きなおしたり(リワインド)、細い幅に切りわけたり(スリット)。その後、一つ一つの商品として包装されます。
感圧接着剤とは?[まとめ]
- 粘着テープに塗工されている粘着剤のこと
- 固体と液体の中間のような存在
- 圧力をかけると形状を変化し、被着体に濡れる(細かい凹凸に入り込む)ためくっつく
以上が、感圧接着剤(PSA)のポイントです。
粘着テープの選定にお困りの際は、当社へお問い合わせください。「どこで」「どのくらいの期間」「どんな目的のために」使用するか、被着体の素材や使用環境などの条件に合った製品をご提案します。