出版したばかりの書籍のことを英語で「Hot off the press(ホット・オフザ・プレス)」といいます。この慣用句は、直訳すると「印刷機からおろしたてで熱い」という意味になります。
デジタル化が進む現代でもこの表現が使われていることから分かるように、出版の文化は私たちのくらしに深く根づいています。いまの出版技術は、ドイツ出身の金細工師であるヨハネス・グーテンベルクが発明したとされる活版印刷技術がもとになっています。
テクノロジー
出版したばかりの書籍のことを英語で「Hot off the press(ホット・オフザ・プレス)」といいます。この慣用句は、直訳すると「印刷機からおろしたてで熱い」という意味になります。
デジタル化が進む現代でもこの表現が使われていることから分かるように、出版の文化は私たちのくらしに深く根づいています。いまの出版技術は、ドイツ出身の金細工師であるヨハネス・グーテンベルクが発明したとされる活版印刷技術がもとになっています。
スピードが求められる新聞印刷や、高い印刷品質が求められる商品パッケージ・ポスター印刷などの分野では、印刷工程のためだけに開発された専用の粘着テープが使われています。活版印刷技術と同じく、私たちテサもドイツ出身の企業です。そのつながりもあってか、印刷技術や工程のの進化とともに粘着テープも進化を遂げてきました。これまで私たちが培ってきたノウハウは、現在も製品開発やお客様サポートの場面で活かされています。
いま、ヨーロッパ各国ではフレキソ印刷(Flexographic Printing)が広く普及しています。私たちはこの分野で印刷に使う版を固定(接着)する粘着テープの研究開発に力を入れて取り組んでいます。従来型のクッションテープ tesa® Softprint(テサ・ソフトプリント)に加え、半永久的に粘着性をもつ特殊なスリーブ・シリンダー tesa® Twinlock(テサ・ツインロック)という2種類のアソートメントから、お客様のご要望に適した製品をご提案いたします。
他にも、フライングスプライス機専用の粘着テープとして開発した tesa® EasySplice(テサ・イージースプライス)があります。この製品は、日本でも多くの企業様にご採用いただいています。走行中の原反同士を瞬時に接着するため、製紙・印刷工程の効率化が期待できる製品です。
私たちテサはこのような新しい印刷技術が普及する前から、凸版印刷の版(ステロ版やゴム版)を印刷機に貼りつける用途でtesaprint®(テサプリント)両面粘着テープをご提供しています。このシリーズは、ヨーロッパ各国で今も現役のロングセラー商品です。本ストーリーの最後で開発当時の様子をご紹介します。
製紙・印刷と粘着テープは一見すると関連がなさそうですが、製造・加工の現場では様々な種類の粘着テープが使われています。これを1つの高機能な粘着テープに切り替えていただくことで、初心者でも扱いやすく工程の簡略化が期待できます。これにより、製紙・印刷業界の人員削減や、時短による利益率の向上が期待できます。
背景には、商業印刷市場の需要が世界的に減少している傾向があります。電子版の新聞や雑誌、チラシなどのデジタル化が進むIT業界の躍進により一部の印刷加工会社は苦境に立たされています。しかし、すべての印刷機を止めてしまうことは難しく、これまで以上に業務の効率化が重要な意味をもつようになりました。
その中でも、食料品の商品パッケージやラベル印刷の分野が賑わいを見せています。同時に、印刷に使われる素材の多様化も進んでいます。私たちテサは、幅広い製品ラインナップから最適な製品をご提案することで印刷加工業界をサポートできればと考えています。版を固定するクッションテープや原反をつなぐテープの他にも、搬送ローラー用のすべり止め、紙管留め、不良個所のマーキングなど、それぞれの用途や工程に適した粘着テープ製品をご用意しています。
ヨーロッパでは、紙パック飲料やフィルム材など「軟包装」と呼ばれる素材の多くにフレキソ印刷の手法が使われています。水性インキをはじめ様々な種類のインキを選択でき、有機溶剤の使用量を削減できる点で優れている印刷方法です。ラベル印刷や段ボール印刷などにもフレキソ印刷が使われています。この手法では、印刷に使う版を印刷機のシリンダー(またはスリーブ)と呼ばれる筒状の部品に貼りつけて印刷します。
版を固定するとき、クッション性のある両面粘着テープを使用します。印圧(インキを印刷面に転移させるために加える圧力)が印刷品質に大きく影響するためです。写真や文字など、印刷するデザインによってクッション材の硬さを変えることもあります。
版の貼り替え作業には一定の時間がかかるため、粘着テープの扱いやすさが作業効率の向上に影響します。そのため、印刷品質と工程の効率化に着目し、様々な種類のクッションテープをご用意しています。さらに、2018年にTwinlockブランドを買収したことで、従来のクッションテープ型と最新テクノロジーを使った粘着性スリーブ型という2つのアプローチからフレキソ印刷の分野をサポートできるようになりました。
フレキソ印刷向けの定番商品は、tesa® Softprint(テサ・ソフトプリント)です。クッション性をもつフォーム材を基材に使用した両面粘着テープで、フレキソ印刷の版を固定する用途のために開発された製品の総称です。フレキソ印刷で使われるクッションテープは、一般的に2種類の厚みカテゴリがあります。380µmはラベル印刷に、500µmはパッケージ印刷などの分野で使われています。
tesa® Softprintは、印刷機のスリーブ(またはシリンダー)に貼りつける側と、版を貼りつける側で粘着剤の配合を微妙に変化させたシリーズ展開をおこなっています。さらに、同じシリーズ(粘着剤の配合)のなかでも印圧の調節ができるように、フォーム材の硬さを選ぶことができるようになっています。
従来品とは異なり、tesa® Twinlock(テサ・ツインロック)はこれまで常識だったクッションテープを貼りつける作業が必要なくなります。あらかじめスリーブやシリンダーにフォーム材を巻きつけておき、繰り返し使用できる特殊な粘着剤を塗布した「粘着スリーブ(シリンダー)」にした製品です。版を固定するときは粘着スリーブに直接貼りつければよいため、クッションテープを貼り込む作業がなくなります。
tesa® Twinlockはセミオーダー式で、お客様のご要望に応じてカスタマイズしていただきます。はじめにスリーブまたはシリンダーのメーカーを選んでいただきき、次にフォーム材の硬さを選んでいただきます。最後にフォーム材の上に特殊なポリマーをコーティングして完成です。
表面のポリマー層は半永久的に粘着性をもつため、版の着脱を繰り返しおこなうことができます。洗浄工程をおこなうことで簡単に再使用(リユース)できることが最大の特徴です。
従来のように使用済みの粘着テープを剥がして廃棄することがなくなるため、廃棄物の削減ができサステナビリティの取り組みにもつながるコンセプトです。また、作業効率の改善や長い目でみたときのコスト削減につながる効果も期待できます。
フレキソ印刷以外でテサの粘着テープが活躍している分野として「スプライス」があります。巨大なロール状の原材料のことを原反(小さく加工される前の状態)と呼びます。例えば、新聞印刷の工程では紙の原反を印刷機に通しますが、なくなったときは新しい紙の原反をつなぐ(継ぐ)ことで、印刷機を連続して稼働させることができます。原反をつなぐ工程のことを総じてスプライスと呼びますが、つなぐ手法は様々です。
その中でも、走行中の原反に新しい原反をぶつけるようにしてくっつける「フライングスプライス」という手法では、機械の速度が毎分2,000メートルの速度に達することもあります。この手法は、走行スピードをほとんど落とさずスプライスができるため、製造・加工の稼働効率を最大限に活かすことができます。ただし原反同士を一瞬で、かつ確実にくっつける技術が必要です。
そこで、20年以上前にフライングスプライス専用の製品として tesa® EasySplice(テサ・イージースプライス)を開発しました。それまでは熟練の職人さんが何種類もの粘着テープを巧みに組み合わせて使っていましたが、1種類のイージースプライステープをまっすぐ貼りつけるだけでよくなり、作業効率の改善に貢献することができました。
いまでは日本国内をはじめ、海外でも多くの製紙・印刷会社様で使用されています。完成した商品やパッケージなどにテサの粘着テープが入ることはありませんが、製紙・印刷業界の業務効率化を担う存在として目に見えないところで活躍しています。他にも、フィルム素材の原反に適した粘着剤を使用した製品なども展開しています。
1890年代、バイヤスドルフ製品の工場に初めてラベル印刷機が導入され、製造効率が大幅に改善されました。これを推し進めたトロプロヴィッツ博士は、のちに「ブランドメーカー」と呼ばれることになった製品開発の要となった人物です。このとき印刷機に目をつけた博士は、印刷機用の製品を次々に開発しました。現在も使われているtesaprint®(テサ・プリント)も、当時開発されたブランドです。
1949年に発売開始したtesaprint®の広告では「輪転印刷で欠かせないもの」とPRしていました。この製品はゴムフィルムの両面に粘着剤を塗布したものです。包み紙やラベルなどを扱う工場や新聞社で、印刷機にゴム製の版をセットする専用の商品として採用されました。
その頃の新聞は、写真を印刷するために亜鉛のプレート(当時は、非常に高価なものでした)を彫って版をつくっていました。粘着テープでしっかり印刷機に固定することで写真もくっきり印刷することができ、読者に対して強いメッセージを発信していました。
バイヤスドルフ氏が医療用の絆創膏の開発に失敗したことがきっかけで、一般的な粘着テープが誕生しました。1890年代、絆創膏の試作品が皮膚に強くつきすぎ、炎症を起こしてしまったのです。自転車のパンク修理に活用することを思いついたトロプロヴィッツ博士は、「スポーツ絆創膏」という製品名で販売するように助言しました。
当時は悪路でタイヤのパンクが日常茶飯事だったこともあり、画期的な商品として話題のヒット商品になりました。このときの片面粘着テープが、医療用以外で初めての粘着テープです。失敗しても諦めない姿勢や、発想の転換をおこなうマインドは、いまのテサにも受け継がれています。